外来通院でがんを治す。
治療後の生活も守る。
陽子線治療は放射線治療の一種。周囲の正常な細胞への影響を抑えながら、がん病巣にピンポイントで照射できるのが特長です。“切らずに治す”体にやさしい治療であり、“切れないがんをも治す”ことも可能になりつつあります。
さまざまな理由で手術ができない、治療の選択肢が限られている、手術や入院は避けたい……。患者さんが抱えている悩みは千差万別です。そんな患者さんの一筋の光となれるよう、私たちは陽子線治療に取り組んでいます。
東京駅~郡山駅間は東北新幹線で約90分。首都圏や近隣県からの日帰り通院が可能です。
陽子線治療は、照射時間も含めた治療時間が15~30分程度と短く、副作用も少ないため、がんの種類によっては外来通院での治療が可能です。仕事を継続し、趣味も楽しみながらがん治療を行う患者さんもいます。治療後のケアも丁寧に行っていますのでご安心ください。
高額な医療費のイメージの陽子線ですが、公的医療保険適用となった部位が増え、陽子線治療が受けやすくなっています。
公的医療保険適用の場合は高額医療費制度も利用できます。
公的医療保険が適用されていないがんの治療の場合は、各種保険会社で用意している「先進医療」等のご準備をお勧めいたします。詳しくは各保険会社までお問い合わせ下さい。
南東北がん陽子線治療センターで
行われているがん治療
陽子線治療は、従来の放射線治療では治療が困難な疾患にも、すぐれた効果を発揮します。
陽子線治療の有効性が確認されている代表的な疾患は、前立腺がん・肝がん・頭蓋内腫瘍・頭頸部腫瘍(副鼻腔がんなど)。肺がんなどの塊状の腫瘍です。患者さんご自身のがんが適応されるかどうかご確認ください。
「公的医療保険」適用部位
頭頸部がん
(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)
- 耳下腺がん
- 上顎洞がん
- 顎下腺がん
- 篩骨洞がん
- 悪性黒色腫
- 口腔がんの非扁平上皮がん など
肝細胞がん
(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)
治療回数 10~38回肝内胆管がん
治療回数 10~38回局所進行性膵がん
治療回数 20~33回局所大腸がん
(手術後に再発したものに限る)
治療回数 18~35回前立腺がん
治療回数 12~39回小児がん
治療回数 6~34回骨軟部腫瘍
(切除非適応のがん)
- 脂肪肉腫
- 骨肉腫 など
「先進医療」適用部位
脳腫瘍
- 髄膜腫
頭頸部がん
(口腔・咽喉頭の扁平上皮がん)
- 舌がん
- 咽頭がん
- 歯肉がん など
食道がん
治療回数 30~35回肺がん
- 非小細胞肺がん
- Ⅰ〜Ⅲ期肺がん
肝臓がん
- 肝細胞がん
(長径4センチメートル未満のもの)
など
肝門部胆管がん/胆道がん
治療回数 22~30回腎臓がん
- 腎細胞がん
膀胱がん
治療回数 30~37回転移性がん
(肺・肝・リンパ節の少数個転移)
各種原発巣から、肺・肝・リンパ節に転移した腫瘍
治療回数 8~38回
腫瘍の深さでピタリと止まる陽子線。
周囲の正常組織への照射を
最小限に抑えられます。
がん治療に使われる放射線は、大きく「光子線」と「粒子線」の二つに分けられます。従来の放射線治療で使われるX線は光子線、陽子線は粒子線の一種です。
陽子線治療は、水素の原子核である陽子を光速の60%近くまで加速してがんにぶつけることで、がん細胞を死滅させる治療法です。すべての細胞は2重のらせん状になったDNA(遺伝子)によって、細胞分裂がコントロールされています。陽子線はがん細胞のDNAを2本とも切断する破壊力を持っており、その増殖を阻止できるのです。
さらに陽子線は、ある深さにおいてエネルギーのピーク(ブラッグピーク)を作り、止まる寸前にエネルギーを全部放出するという物理的特性を持っています。この特性を利用し、がんの近くにある臓器や周囲の正常細胞への影響を抑えながら、ピンポイントでがんを狙い撃ちできることも陽子線治療の特長です。体にメスを入れることなく、副作用も最小限に抑えられるため、がんの種類によっては外来通院で治療ができます。
陽子線だけで治療が難しい症例は、陽子線にエックス線や化学療法(抗がん剤)を組み合わせ、それぞれの治療法が得意とするところを生かした治療をご提供しています。
ブラッグピークとは
陽子線は照射されると、体内のある一定の深さで止まる直前にエネルギーのピークを形成し、その後停止する特徴があります。
がん病巣に集中して照射できるので・・・
- 正常組織への影響を減らすことができます。
- 腫瘍に対し、強い放射線が照射できます。
- 放射線に弱い気管等の近くにあるがん細胞にも照射できます。
- がんの種類によっては、仕事や日常生活をつづけながら外来通院での治療が可能です。
- 再発したがんにも再照射できる事例があります。
総合病院だから実現できる
陽子線のがん治療の特徴
南東北がん陽子線治療センターは、総合南東北病院と隣接していることにより、複数の診療科専門医師と一緒に総合的に患者さんを診ることができます。他の病気が併発している場合や、陽子線単独では治療が困難ながんに対しても、他診療科と連携することで効果的な治療が可能です。患者さんの状況に合わせて、化学療法や手術と組み合わせた集学的な治療法を行うことで、高い治療効果を目指しています。
「スペーサー手術」で腹部領域のがんも治療可能に
肝臓の一部や膀胱などの腹部・骨盤領域のがんは、陽子線で最も治療しにくい部位といわれています。そのまま陽子線を照射し、隣り合っている胃や十二指腸などにも高線量の陽子線が当たってしまった場合、後から腸管などに穴があいてしまう恐れがあるためです。
これらのがんに対し、当センターでは外科と連携して「スペーサー手術」をした後に陽子線治療を行っています。手術でがんと消化管との間に患者さん自身の脂肪(大網)や、術後半年ほどで体に吸収される不織布型の生体吸収性スペーサーを入れてスペースをつくり、消化器官に高線量の陽子線が当たらないようにする、というものです。
この方法により、手術で取れないがん、放射線を十分に当てられなかったがんも治療が可能になっています。
前立腺がんに対するスペーサー留置後の短期陽子線治療
前立腺がんに対する陽子線治療は、手術等とくらべ尿漏れや性機能障害などの、副作用のリスクが少ないことが特長です。しかし治療の際に前立腺と隣接する直腸に陽子線が当たり、直腸からの出血などが生じる可能性もゼロではありません。これを回避するため、1回ごとの線量を低くして合計37~39回の陽子線照射を行うことが一般的です。当センターでは、前立腺と直腸の間にスペースをつくる「スペーサー留置術」を行うことで直腸に当たる陽子線の量を減らし、1回ごとの線量を上げる短期陽子線治療に取り組んでいます。
スペーサー留置術は日帰りで行います。約3カ月間スペースを維持した後、半年ほどかけて体内に吸収される「ハイドロゲル」素材を前立腺と直腸の間に注入し、さらに金マーカーを留置します。この処置によって直腸出血などの副作用のリスクを抑えつつ、12〜20回での陽子線治療が可能です。
頭頸部がんや膀胱がんに対する動注化学療法併用陽子線治療
南東北がん陽子線治療センターでは頭頸部の機能・形態を温存するために、陽子線治療と動注化学療法を組み合わせた集学的治療に取り組んでいます。頭頸部では特に舌がん、上顎がん、咽頭がんなどに有効です。
また、進行した膀胱がんは、通常は膀胱全摘出になりますが、膀胱温存を期待した、陽子線治療と動注化学療法の併用療法を行なっています。
動注化学療法とは、血管からカテーテルを挿入し、がん組織に栄養を送る動脈に直接抗がん剤を流して局所のがんを縮小・消失させる治療法です。静脈から流す通常の抗がん剤治療と異なり、がんに栄養を与えている動脈だけに、高濃度の抗がん剤を投与できるため、治療効果が高いのが特長です。また使用する抗がん剤には、放射線増感作用があり、陽子線(放射線)と併用することで、治療効果を高めることが出来ます。
2つの動注化学療法
動注化学療法には、カテーテルを耳の前にある浅側頭動脈から挿入する「逆行性動注化学療法」と、大腿動脈や上腕動脈から挿入する「セルジンガー法による超選択的動注化学療法」の2種類があります。当センターの頭頸部がんに対する動注療法では2つを使い分け、より効果的な治療を行っています。膀胱がんの場合はセルジンガー法で行います。
- 進行舌がんに対する逆行性動注化学療法
- セルジンガー法による
超選択的動注化学療法 - 膀胱がんに対する動注化学療法
陽子線再照射
従来の放射線治療は一度きりの治療で、放射線治療後に照射野内で再発した場合には、再照射は困難でした。
しかし陽子線はブラッグピークがあるため、腫瘍に高線量を投与しつつ、周囲の正常組織へのダメージを低く抑えることができます。その結果、放射線治療後の再発例に対する陽子線再照射が可能となってきました。
陽子線治療の治療費について
南東北がん陽子線センターで陽子線治療を受けていただく場合の、治療にかかる費用とお支払い方法についてのご案内です。
治療費(治療技術費)はがんの種類や患者さんの保険の状況により、大きく3種類に分けられます。
現在健康な方でも、将来のリスクに備えて知ることが大切です。
保険診療について
公的医療保険の適用部位が増えてきています。適用のがんについては、「陽子線治療が行えるがんの種類」の「公的医療保険」適用部位が該当します。
先進医療について
公的医療保険に該当しないがんで、民間の医療保険(先進医療給付金特約制度)に加入している方が利用できます。支払い条件等については、保険会社にご確認ください。
自由診療について
自由診療での治療費は、陽子線治療費、診察・検査にかかる費用など全額が自己負担となります。
治療費の目安は、300万円(税別)です。